状況に応じたリーダーシップ
リーダーシップが難しくて興味深い理由の一つに
状況によって求められるリーダーシップのスタイルが異なることがあります。
平穏無事な時は、みんなの意見を聞く民主的なリーダーシップが好まれます。
「俺たちの意見を聞いてくれ」というものです。
一方、高い目標を設定した時などは、民主的にやると、
「目標は低いほど達成しやすいから、低い目標にしてくれ」
ということで、みんなの意見を聞いていては、高い目標達成はままなりません。
なので、みずからぐいぐい引っ張るペースセッター的なリーダーシップが
必要になります。
今年、上層部へのテーマ提言を指導している中で、残念なリーダーが2人いました。
一人は、自分でテーマを出し、メンバーにも認められ、そのテーマで決まり、
当初ペースセッター的なリーダーシップを発揮していた人なのですが、
途中から、業務多忙を理由に降りてしまった人です。
当然、そのテーマは中断となり、かつそのチームも解体されました。
会社を挙げて取り組み始めたプログラムだっただけに、
本人が残念だっただけでなく、メンバーにも、他のグループにも、事務局にも、
また会社の上層部にも「残念な結果」となりました。
途中で降りるくらいなら、最初からそのテーマ出しをしなければ良かったわけです。
もう一人は、別のプログラムで、頑固なタイプのリーダーです。
一度テーマを決めて走り出し、グループの中で圧倒的な存在感を示していたため、
メンバーは、自分たちのグループを「チーム○○」とそのリーダーの名前を冠するほどになりました。
しかし、新規のことについてのテーマなので、途中でいろいろな新しいことが分かってくると
本来は軌道修正をするのですが、そのリーダーは、頑として初志貫徹、当初立てた仮説と結論を
変えようとしないのです。
こちらから、いろいろとリサーチ結果を反映して見直すようにアドバイスをしたのですが、
「自分が反応すると、怒っちゃうから、だれか他のメンバーが対応してくれ」
というような趣旨の発言をグループ打ち合わせの中で行い、
リーダーと目されている自分が考えを変える意思のないことを暗に示して、
変えようとしなかったのです。
メンバーもリーダーに気を使い、そうした頑迷なリーダーの意向に従うこととなりました。
講師の言うことを聞いて、変えたとなれば、リーダーとしての沽券にかかわるとでも
思っていたのでしょうか?
その結果、他のグループは、リサーチ結果をもとに、どんどん仮説を進化させているにも
かかわらず、そのグループだけ、思考停止状態に陥ってしまって、当初仮説を見直さないまま
プレゼン資料作りに進むことになってしまったのです。
いくらグループの中でリーダーシップを発揮できても、自分たちの仮説を見直さない頑迷なリーダーと
なってしまっては、いい提言を行うことはできません。
ですので、「状況」というのは、環境要因が変わることもあれば、内部の要因が変わることも
あるので、そうした内外の状況変化に気づき、リーダーシップスタイルを柔軟に変えていく必要が
あるわけです。