筋の悪いアイデアを引きずらない

今年度ある大企業の部長クラスの新規事業企画指導を始めました。
前任の講師の指導方法が良くないということで、講師交代となって引き受けたのでした。

それで5月のアイデア出しから指導を始めて、合計10グループほどあるのですが、
その中で、初期段階センスの悪いアイデアを選んだグループが4つ程ありました。

新規事業のアイデア選定に関しては、選定基準はこちらから与えますが、選ぶのは
自分たちなので、自分たちが気に入ったアイデアを選ぶのですが、その中にこちらから見ると、
センスの悪いアイデアを選んでしまうことがあります。

それについては、こちらからそれとなく、「それ、センス悪いよ」と何度かアドバイス
するのですが、一度決めると、なかなか変えようとしません。

途中、7月の社長への中間報告前に、1つのグループがテーマチェンジをしました。
残りの3つは、しないでそのまま中間報告をして、いろいろ言われました。

その中間報告後にワークショップを実施し、指摘を受けた点を直したり、
さらに具体化したりして、9月に準最終報告に臨んでもらうのですが、
残りの3つのうち、1つがテーマの微修正(業界用語でピボットするといいます)を
行いました。

残りの2つは、殆ど変えていません

その結果、どうなっているかというと、
最も早くテーマチェンジしたグループの提案がダントツに良くなりました。
悪いテーマを捨てて、リザーブの別のテーマに変えたのが奏功したのです。
続いて、微修正したグループ、
そして、相変わらずひどいままなのが、テーマチェンジしない2グループとなっています。

では、なぜこういうことが起こるのでしょうか?

私は原因は3つ程あるとみています。
(1)良くないテーマだと分かっていても、変える手間を惜しんでいる
(2)テーマの筋の悪さをリーダー格の人が理解できないでいる
(3)どうせ研修だからと、撃沈を覚悟で突進している

人間の習性として、一番の近道を選びたいという本能があります。
これは、誰しもが持っている本能です。
おそらく動物も同じでしょう。

日露戦争でロシアのバルチック艦隊も、ウラジオストク港への最短経路を選んで、
日本海で待ち構えていた連合艦隊に迎撃され、壊滅させられました。
連合艦隊司令長官の東郷平八郎は、その人間心理を読んで、待ち構えていたのでした。

当面の手間を省くことで、のちのち致命的なことになることに、気づかないリーダーは
リーダーとして失格です。

リーダーシップの発揮は、本人の気づきに端を発するものですから、
日頃から、自分の気づき方、状況判断力を高めておく必要がありますね。

私は、こういうプロセスを通じて、リーダーシップの本質を体験的に学んでもらっています。

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