AIにVSフレームワークを使わせてみると・・・
先週、やはり月一で実施している別のシリーズ物の研修の第2回があり、今回は、
生成AIを使って、SWOT分析やVSフレームワークへの当てはめをやってもらいました。
手始めに、SWOT分析から始めましたが、こちらは良く知られているフレーム
ワークで、4つあるどのチームも大半の人が生成AIを使ったことがあったので、
ちゃんと当てはめが出来ていました。
続いて、戦略立案や中計作成に使用している当社オリジナルのVSフレームワーク
を使って、20ページ~30ページある各社の中計を1枚にまとめることに
チャレンジしてもらいました。
(VSフレームワーク、ビジョン戦略立案フレームワークの略で、拙著でもご紹介
していますが、詳しくは、こちらをご覧ください。)
SWOTほど一般的なフレームワークではないので、果たして、生成AIはきちんと
理解できたでしょうか?また、分析はうまく行ったでしょうか?
結論から言うと、うまく行った部分と、そうでない部分が、はっきりと分かれました。
<うまく行ったところ>
まず、シートの左側「現状と将来見通し」。マクロ環境、市場や競合の動向、
直近年度の売上・利益率といった項目は、中計や決算説明資料に書いてある
ことですので、きれいに拾えていました。数字の転記もほぼ正確で、
20~30ページを一枚に圧縮する要約力は、さすがと言うほかありません。
右側の「ビジョンと目標」も同様でした。理念、ビジョン、経営目標の数値は
中計に明記されていますから、ほとんど転記で済みます。事業戦略や機能別
戦略の欄も、中計の章立てに沿って、それらしく埋まっていました。
何より速い。人がやれば一社あたり半日仕事のところ、十分ほどでそれらしい
一枚が出てきます。ここは素直に驚きました。
<うまく行かなかったところ>
一方で、うまく行かなかったのは、次のようなところです。
①ギャップの欄が埋まらない
定量面のギャップ、つまり現状の売上と目標売上の差は計算できます。
ところが定性面――事業面、技術面、組織面、ヒト面などのギャップに
なると、途端に薄くなります。中計に書いていないからです。
「書いてあることを転記する欄」と「書いていないことを読み解く欄」の
区別が、AIにはついていないようでした。
②強み・弱み・成功パターンが通り一遍
強みは会社が自分で書いたものを拾うので、美点の羅列になります。
弱みは中計にはまず書いてありませんから、当たり障りのない一般論。
そして「成功パターン」に至っては、当社独自の言い方ですので、
ほとんど理解されませんでした。独自用語の壁ですね。
③基本戦略のFrom→Toが書けない
施策を並べることはできるのですが、「何から何へ変わるのか」という
転換の軸が出てきません。あるチームでは、Fromに「売上1,000億円」、
Toに「売上1,500億円」と入っていて、これでは経営目標の欄と
同じです。「売り切り型からサービス課金型へ」といった構造の変化を
言葉にするのは、まだ人間の仕事のようです。
④三つの戦略の切り分けが曖昧
組織戦略、事業戦略、機能別戦略の区別がつかず、同じ施策があちこちに
顔を出します。DX推進は機能別戦略なのか組織戦略なのか、といった
ところですね。以前このコラムに書いた「なんちゃってMECE」と
同じ話です。
⑤一枚に収まらない
これは笑ってしまいましたが、各枠に文章を詰め込んで、二枚三枚に
なってしまうチームがありました。一枚モノの本質は「捨てること」
ですが、AIは拾ったものを捨てるのが、どうも苦手なようです。
<分かったこと>
うまく行ったチームとそうでないチームの差は、はっきりしていました。
枠の名前だけを貼り付けたチームより、各欄の定義と記入例まで説明した
チームのほうが、明らかに良い出来だったのです。
そこで後半は、次のような工夫をしてもらいました。
・各欄が何を書く欄なのか、定義と記入例をプロンプトに入れる
・「中計に書いてある事実」と「そこから読み取った推測」を分けて
書かせ、推測にはその根拠を添えさせる
・各項目は三十字以内、箇条書きは三つまでと、分量を指定する
・埋まらない欄は、無理に埋めずに空欄のまま残す
最後の一つが、今回いちばんの収穫でした。埋まらない欄というのは、
その会社の中計で語られていない部分、すなわち議論すべき論点です。
空欄を消すために使うのではなく、空欄を見つけるために使う。そういう
使い方もあるのだと、私自身、教えられた気がします。
受講者からは、「フレームワークを人に説明できるくらい分かっていないと、
AIにも使わせられませんね」という感想が出ました。まったくその通りで、
AIは、知っているフレームワークは上手に使いますが、知らないものは、
説明された分しか使えません。裏返せば、我々が普段どれだけ暗黙のうちに、
枠の意味を補いながら使っていたか、ということでもあります。

