残念な大学院教育

先週、友人の大学教授に頼まれて、ある大学院の学生のビジネスプランの講評を行いました。
私の著書『ゼロから分かる事業計画書の作り方』をテキストにしているということでしたので、
意気込んで臨みました。

3名の受講者がいて、3名が各々30分かけて自分のビジネスプランを紹介し、その後20分間で
Q&Aを行いながらアドバイスをするという形式を取りました。
すべてオンラインで実施しました。

1人目の人は、それなりにビジネスプランになっていたので、いろいろとアドバイスしたのですが、
2人目の人からおかしくなってきました。

2人目の人は、自身でお店を経営しているという人で、最初はコロナ対策機器の話から始まったので、
何かコロナ対策関連ビジネスの話をするのかなと思っていたら、途中で農業の話に変わり、
最終的には、植物工場関連のフランチャイズビジネスをやりたいということになりました。
話の組み立てが、自分のリサーチの遍歴を語っている感じで、通常のビジネスプランとは
ずいぶんと違ったものになっていました。

私は、過去農業関連のビジネスプランや植物工場関係の話も扱ったことがあったので、
知っていることをいろいろとアドバイスをしたのですが、どうも指導教官からは、
そうしたアドバイスは受けていなかったようでした。

そして、3人目の人の番が来ました。
その人は、メーカーで特定のデバイスの開発を10年以上やっていた人で、
ここの大学院でも、そのデバイスの他用途開発ができないかというようなテーマで
検討しているようでしたが、まだそれが見つかっていないという発表だったのです。
えっつ!?
昨年4月に入学して、9ヶ月は経っているわけですが、製品・事業アイデアともゼロ
だったのです。
どうなっているんだろう?ここの大学の大学院生指導は?
と思いました。

現在、並行で、関西の方の企業グループの新規事業検討を指導していますが、
その会社では、新人研修で出たアイデアが採用されて参加している人たちもいるくらいです。
若い人たちがグループになってわいわい言いながら楽しそうにやっています。

それと比べると、いくら技術系の大学院とはいえ、社会人経験が10年以上もある人たちが
入学して半年以上経っても、何一つテーマすら決まらないというような指導をしているって
どういうことなのか?と不思議に思いました。

私の本を見てもらえれば、アイデアの出し方も書いてありますし、それの肉付けの仕方や
ビジネスプランへのまとめ方も書いてあります。

いくら技術系の研究者の先生が指導しているといっても、もうちょっとどうにかならない
ものかと思いました。

因みに、その3人目の人については、まずはそのデバイスを使ってもらっているお客様から
話を聞くことを始めてはどうかとアドバイスしておきました。
そうすれば、そのデバイスに関する不満や要望、他用途へのヒントが得られるのではないか
ということです。
とにかく、1人で悶々と考えていてはダメなので、関係する人に話を聞いてみることだと
アドバイスしたのです。

ひょっとして日本の工学系の大学院ではこういうところが多いのでしょうか?

感想やご意見があればお寄せください。

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残念な大学院教育” に対して1件のコメントがあります。

  1. H より:

    いつも楽しみに拝見しておりますHと申します。

    井口先生の書籍は、私にとってスッと腹落ちするところが好きで、
    いくつも読ませてもらっています。また実際の事業での応用や
    道しるべとして活用させていただいております。
    ありがとうございます。
    今回のコラムを拝見し、コメントさせていただきます。

    私は現在メーカ系の企業に勤めており新規事業担当をしております。
    はっきり背景はわからないのですが、3人目の方は技術開発を
    されている方なのでしょうか。
    井口さんのご指摘の通り、せっかく勇気をもって大学院に入って
    壁を越えようと頑張っているのであれば、大学として打破するための
    指導をしていただきたいと思って読ませていただきました。

    ただ技術系の人材の中には、一人で抱え込んでしまって前に進めない
    人が少なからずいます。井口さんが書かれているように、お客様に
    ご意見を聞こうとする技術者になってくれると、もっと伸びてくれると
    思っています。逆もあって、営業がもっと技術のことを理解して
    要求を出せるようになってくれたらとも思います。
    つまり、もっと現場レベルで技術と営業がコミュニケーションを
    とれる会社ならいいのですが、なかなかうまくいきません。
    どちらでもいいので聞きに行くことをすれば、いろいろな化学反応が
    出るので、勇気をもってアクションしてほしいと思っています。
    両者の共感が生まれれば営業はお客様にも連れて行ってくれるし、
    お客様ではわからないニーズも教えてくれることもあると思います。

    私の勤めている会社でも、同じような壁があります。
    これまで営業のわがままでニーズ別に商品を作ってきて、カニバリがあったので、
    最近、商品体系の見直しを、次の世代の技術と営業で話し合いを行う
    プロジェクトをスタートしました。
    始まったばかりですが、自社商品の選択と集中を目指そうとしているので
    本音ベースでの会話が生まれ、壁に小さな穴が開いたのではと思っています。
    自社商品の選択と集中がゴールですが、技術と営業のコミュニケーションの
    活性化という化学反応も期待しているところです。

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