なんちゃってMECE分析

先々週始まった半年間のアクションラーニング講座の第一日、ロジカルシンキング
(論理思考)の基礎ということで、初めて集まった20名弱の受講者の人達に
4グループに分かれてもらい、帰納法、演繹法、MECE分析などに取り組んで
もらいました。

すでに半数以上の人達が事前にロジシン受講済みということでしたので、期待して
臨んだのですが、実際にやってみてもらうと、「なんちゃって・・・」が多くて、
笑ってしまいました。

いくつか事例を紹介しましょう。

①日本列島を地域別に分ける
まずは肩慣らしにと、「日本列島を地域別にMECEに分けてください」と
お願いしたところ、あるグループから出てきたのが、

「北海道、東北、関東、東海、関西、中国、四国、九州」という分け方でした。
一見きれいに並んでいますが、これでは新潟・富山・
石川・福井の北陸と、
山梨・長野の甲信が、どこにも入りません。

ついでに沖縄も抜けています。典型的な「モレ」です。

原因ははっきりしていて、小学校で習った八地方区分の「中部地方」を、
ビジネスの現場でよく使う「東海地方」に置き換えてしまった
ことです。
東海は愛知・岐阜・静岡に三重を加えて呼ぶことが多く、
その三重は
八地方区分では近畿に入りますから、モレだけでなく
「ダブり」まで
生じかねません。行政上の区分と、経済圏としての
呼び名という、
切り口の違うものを混ぜてしまったわけです。

正しくは、「北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、
九州・沖縄」。これなら47都道府県が必ずどこか一つに収まり、
二重に入るところもありません。

②野球の守備のポジションを分ける
次は「野球の守備のポジションをMECEに分けてください」というお題。
あるグループの答えは「内野手と外野手」の二つ。よく聞いて
みると、
ピッチャーとキャッチャーは内野手に入れているとのこと。

ダイヤモンドの中にいるのだから内野手だろう、という理屈です。

気持ちは分かりますが、投手と捕手は「バッテリー」であって、
内野手ではありません。内野手は一塁手・二塁手・三塁手・遊撃手の
四人です。これはモレというより、分類の定義が曖昧なまま分けて
しまったために起きた取り違えで、放っておくと守備位置の議論が
かみ合わなくなります。

正しくは、「バッテリー(投手・捕手)、内野手(一塁・二塁・三塁・
遊撃)、外野手(左翼・中堅・右翼)」の三分類で、合計九つの
ポジション。足し合わせてちょうど九人になるかどうかが、モレ・ダブりの
検証になります。
なお指名打者(DH)は守備につきません
ので、この分類には入りません。
「そもそも何を分けるのか」という
全体集合を最初に決めておかないと、
こうした迷いが出てきます。

③会社の経営資源を分ける
三つ目は「会社の経営資源をMECEに挙げてください」というお題。
すかさず出てきたのが、おなじみの「ヒト・モノ・カネ」。
自信満々のご様子でしたが、これも「なんちゃって」です。

今の時代、経営資源から「情報」が抜けていては話になりません。
顧客データ、技術、ノウハウ、ブランド、信用――いずれも立派な
経営資源であり、むしろヒト・モノ・カネ以上に企業間の差がつく
ところです。目に見える資源だけを並べて、目に見えない資源を
落としてしまう。これもまた「モレ」の一種です。

正しくは「ヒト・モノ・カネ・情報」の四つ。最近ではこれに
「時間」を加えて五つとする考え方もありますし、知的財産や
組織風土まで含めて論じることもあります。いずれにしても、
昔覚えた三つで止まっていないか、点検しておきたいところです。

***

三つの事例に共通しているのは、次の三点です。

・そもそも何を分けるのか(全体集合)をはっきりさせていない
・分けている途中で切り口をすり替えている
・分け終わった後に、モレとダブりを検証していない

逆に言えば、この三つを押さえるだけで、「なんちゃってMECE」
からはかなり卒業できます。フレームワークを知っていることと、
それを使って自分の頭で考えられることは、別物なのですね。

受講者の皆さんも、笑いながらもしっかり納得顔でした。
残り半年、じっくり鍛えていきたいと思います。

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