OMRONのROIC経営
先週は、最近上場企業を中心に導入が進んでいる経営指標のROICがどんなものか
という話をしました。
今週は、その使い方についてです。
皆さん、企業にお勤めの方が多いと思いますが、自社がどの程度の利益を出す
必要があるか、ご存じですか?
例えば、事業での儲けを表すのは営業利益ですが、必要な営業利益率ってどれ位?
と聞かれて答えられますか?ということなんです。
これは、有ればあるだけいい、ということでもないんです。
今回は、ROICに絡めて、その辺りからお話ししていきたいと思います。
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1.必要な営業利益(率)
まず、企業として必要な利益ってどれくらいかという話ですが、
一言でいうと、資本コスト以上の利益が必要ということになります。
では、その資本コストとか何かというと、バランスシートを維持するために必要なお金のことを
いいます。
バランスシートというのは、貸借対照表のことですが、そこには企業が持っている固定資産や
流動資産が載っています。
つまり企業が持っているものを維持するのに必要なコストが資本コストというものなのです。
その資本コストというのは、バランスシートの右側に目を向けると、負債と純資産があります。
負債の場合は、ざっくり言うと金利が掛かりますね。
また純資産の場合は、株主に配当を配りますが、純資産のコストには、配当以外に
株主期待収益率と言って、平たく言うと株価が上がる分ということになります。
この負債コストと純資産コストを合わせて資本コストと言います。
これを率で表したのが資本コスト率というもので、
営業利益は、税金を引いた後で、この資本コスト率を上回る利益率が必要だということに
なるのです。
それで前回学んだROICでは、税引後を利益を使っていましたが、ROICは率で表しますから、
このROICが資本コスト率以上高くなければならないということになるわけです。
多くの日本企業では、資本コスト率が5~8%程度ありますから、
それでROIC 10%以上をターゲットにする企業が多いわけです。
2.OMRONのROIC経営
オムロンは2013年からROIC(投下資本利益率)を事業評価指標として導入し、
2014年3月期から正式に「ROIC経営」を標榜しています。
そして、ROICの考え方を現場まで浸透させるため、2015年からは「ROIC経営2.0」として、
定性的な翻訳式や独自の「ROIC逆ツリー」を活用した運用を開始しました(下図参照)。
ポイントは大きく2つあり、1つは、企業として健全な経営を行うために必要なROICの
目標値をクリアするために、ROIC逆ツリーということで、ROICをブレークダウンして、
事業や現場のKPI(重要指標)に落とし込んでマネジメントを行うということです(下図左)。
そしてもう一つは、ROICを使ったポートフォリオマネジメントを行うということです。
このROICは事業別に算出することができるので、事業ごとのROICと成長性を下図の
右のようにマトリックスで表現して、事業の重点の置きどころや、必要に応じて
事業の入れ替えに使って行くということです。
企業は成長するために事業領域を広げていく必要がありますから、その方向性や
重点の置きどころをこのROICを使ったポートフォリオマネジメントで行って行く
ということです。
以上、今回のお話をまとめると、
(1)企業として必要な利益というのは、資本コスト以上の利益を指します。
(2)OMRONは、その必要な利益を確保するためにROIC経営を行っている
ということになります。