(この話は、10年後の望ましい将来像を語ったものです。)

「世界で好感度No.1の日本」

8月、今年も熱帯夜が続いている。エアコンを入れた仕事部屋で、井口は夕食後の余暇を楽しんでいる。パソコンを見ていたら、SNSの知り合いから、「外国人留学生の日本紹介ビデオが面白い!」というのがあったので、さっそくクリックして見てみた。

You Tubeの動画になっていて、ミヤンマー人のテインタンさんという人が、カメラに向かって何やらよく分からない言葉でしゃべっている。たぶん、ミヤンマー語なのだろう。動画は、日本語字幕と英語字幕が選べるようになっているので、日本語字幕を選んでみた。

まず、彼の在籍するアジア大学のキャンパスの様子。食堂や教室、図書館、研究室等の様子が紹介される。「このように、私の大学は、とてもきれいです。日本に来て驚くのは、どこもかしこもきれいなことです。汚い所が見つかりません。どうしてこんなにきれいなのか、聞いてみましょう。」と言って、傍らの日本人の友達に日本語で問いかける。すると、「えっ、そんなにきれい?」と聞かれた方が驚いている。「いやぁ、別に。これが普通だよ。お掃除のおばさんが掃除してくれているからじゃないの?」とテインタンさんの質問の意図にはちゃんと答えられていないが、リアクションが面白い。

続いて、テインタンさんは、「日本の人は、とても親切です。例えば、知らないところに行って、見知らぬ人に道を聞いても、必ず、教えてくれます。知らんぷりされたことは一度もありません」と言って、御茶ノ水の交差点らしきところで、来た人に「古本屋街はどこですか?」と尋ねて、応えてもらっていた。「ほら、ほんとでしょ。みんな親切です。信じられません。」と声をあげている。井口は、「いいね!」ボタンを押して、コメントを書き込んだ。「別に驚くことじゃないですよ。みんなやってますよ。」と。

見ていて面白いのは、「ああ、海外から来た人は、日本のそういうところに感心したり、驚いたりするんだ。」ということが分かることだ。ふだん私たちが、ふつうにやっていることが、海外からの人に新鮮だったり、驚きだったりする。そういうものかもしれない。

検索してみると、こうした留学生による日本紹介動画は、なんと何百と出てくる。ミヤンマーだけでなく、ベトナム、フィリピン、インド、中国、韓国、サウジ、エジプト、イラン、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、トルコ、ロシア、アメリカ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランド等、およそ世界の国々150ヶ国位のものがあり、一つの国でも、何人もの異なる留学生がジャンルの異なるビデオの制作をしている。

実は、これは、政府の「世界の国々への日本紹介」というプログラムの一環で行われている活動なのだそうだ。従来の正式な硬い感じの日本紹介ではなくて、その国の人が日本に来たらどんなことを感じるか、彼らの目線、言葉で本国に語ってもらおうという主旨で始めたものだ。NHKに事務局があって、機材やノウハウを提供しているらしい。NHKのホームページを見ると、留学生の人たちへの案内と合わせて、彼らの様子が紹介されている。それを見ていると、彼らは、喜んでこれに取り組んでくれているようだ。誰だって、本国の人たちに自分が頑張っている様子を伝えたいのは、自然な気持ちだからだ。それぞれのビデオの再生回数は、何万回となっている。たぶん、インターネットで本国の友人や家族などがみているのだろう。ただ、知り合いだけではこれだけの数にはならないから、もっと広い層の人たちに受けているんだろう。

こうした活動に関心を持った井口は、他にないかと思って検索してみた。すると、こんなのが出てきた。海外の日本大使館や領事館主催の、「日本の歌コンクール」である。これも動画があった。インドでやっているやつだ。見てみると、日本人コーナーと現地人コーナーがあって、現地の人が日本語の歌を歌っている。「北国の春」や「卒業写真」、「昴」等演歌に限らずJ-POPまでカバーしている。インドの男性が「昴」を朗々と歌うシーンなどは、そのアンバランス感に失笑しながらも、歌のうまさに驚いた。「へぇ、インドの人も日本語の歌を歌うんだ。」と逆に感心した。

日本語の言葉の壁があると思いきや、我々も若い頃意味も分からず英語の歌を歌っていたが、どうやら、J-POPのメロディや抒情性が受けているようだった。そういえば、ずいぶん前に、由紀さおりの古い歌がアメリカで受けていたのを思い出した。若い人はロックとかの激しいのがいいんだろうが、熟年になってくると、穏やかな癒しのメロディーの方がよくなる。日本の歌は、そっち系の人に受けているのかもしれない。

このコンクールは、世界各国で行われ、NHKののど自慢よろしく、各国のチャンピオンが、毎年1回、日本に集まってグランドチャンピオンが選ばれているそうだ。
こうしたいろいろな活動の成果があってか、世界の国々での日本の好感度は増している。国連が取り始めた統計によると、日本は、2、3年前から好感度世界一になっているという。昔は、金でしか貢献しないと批判されたが、こうしたお金ではないもの、日本及び日本人、日本文化が持つ良さを世界の国々に広めることで、世界から愛される国になっていくことができるんだなぁと思うのであった。